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「小布施バーチャル町民会議」の中の人にインタビューしてみた。

長野県一小さな面積の小布施町で行われる「小布施バーチャル町民会議」。小布施町内外の垣根を越えて、実験的に「地方」と「都市」の在り方を考える取り組みであることを、こちらの記事で紹介しました。

小布施バーチャル町民会議では、「関係人口」「観光」「教育」の3つのテーマを取り上げます。今回は、そのテーマに関連する領域で活動し、小布施バーチャル町民会議に「テーマオーナー」として関わる3人に、小布施にかかわるきっかけや活動内容についてインタビューしました。

テーマオーナー
 林志洋(はやししょう / テーマ:観光)
 日髙健(ひだかたけし / テーマ:関係人口)
 遠山宏樹(とおやまひろき / テーマ:教育)
インタビュアー
 髙津ひかり(小布施町出身)

テーマオーナーってどんな人?

ー まずは自己紹介として、これまでしてきたことや関心のあることを教えてください。では、日髙さんからお願いします。

日髙
「日髙健です。出身は東京で、2020年の1月に越してきたので、小布施に移住して約1年が経ちます。
いまは、小布施町の地域おこし協力隊員として活動をしているのに加えて、小布施まちイノベーションHUBという民間の組織があるのですが、そこに所属をしています。
地域おこし協力隊では、コロナ禍の中で町内にある飲食店のテイクアウト情報をまとめてウェブサイトを立ち上げるなど、産業振興担当として活動をしています。」

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ー 関心があるのはどんなことですか?

日髙
「関心があることは、食べることが、すごい好きで(笑)
だから小布施にいることができて幸せなんですよね。おいしいお店が多いし、あと、りんごとか、その場で採れたものが食べれるから。生産現場に近いと、ごはんっておいしいのかな、って感じますね。

あとは映画が好きで、3月に行われる小布施短編映画祭にも実行委員としてかかわっています。」

ー では、林さんお願いします。


「林志洋です。神戸出身です。小布施に移住して約半年が経ちました。
東京のコンサルティング企業でコンサルタントを経て、日本進出を目指す海外のベンチャー企業を支援する事業に携わってきました。」

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「ただ、もともと大学院では公共政策の分野でテクノロジーがどうやって社会に広がっていくのか、という研究をしていたので、まちづくりには興味があって
2018年の小布施若者会議に参加したのがきっかけで、小布施のまちづくりにかかわるようになりました。」

ー なんだか、グローバルからローカルへ一気に転換した感じですね。おもしろい・・・


「そうですね、大学のときもシンガポールに行ったり、大学院は中国、韓国、日本の3か国で学んできて、グローバルに活動してきました。

でも、色々な国に行く中で次第に『海外に行くかどうか』ということが自分の中では意味を持たなくなってきたのです。海外であろうと国内であろうと、目の前の課題に取り組むのが大切だなと。

では、自分が今何をやりたいのか、と考えたときに、いちばん面白そうなことができそうな場所として小布施に来ました。」

ー 「国内外の境目がない」というのは、グローバルな経験をされてきたからこそ得られる感覚な気がしますね。
  遠山さんはお三方の中で唯一、長野出身ですよね?

遠山
「そうですね、生まれも育ちも長野で、大学も地元の教育学部を卒業しました。遠山宏樹と申します。小布施には約1年住んでいます。
2013年の小布施若者会議に参加して、そこから小布施との細いつながりが生まれました。」

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「その翌年に小布施町で開催された、HLAB(エイチラボ)のサマースクールに参加し、『地元の高校生に参加してほしい』という思いから活動に深くかかわるようになりました。若者会議の当日のサポートなども携わって、学生時代を過ごしました。

その中で、『もっと視野を広げよう』と高校生に伝えている自分自身の視野が広がっていないことに気づかされ、県外でも海外でもいいから、『とにかく外に出たい』という思いが高まりました。
もともといつか行きたいと思っていたので、青年海外協力隊に応募して、ガーナに約2年行きました。現地では教育現場で、ICT活用を導入する取り組みを行いました。

小布施にかかわることになったきっかけは?

ー 遠山さんは、帰国してからすぐに小布施町にかかわることになったんですか?

遠山
「そうですね、小布施には帰国後もご縁がありました。また、教育という分野は変わらずに軸にありました。
教育という分野でかかわっていきたい想いと、『いましかできないこと』、『自分が生まれ育ってきた”地方”という環境でできること』をやりたいと思い、地域おこし協力隊員の教育担当として小布施に移住しました。

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大きくとらえると、自分と同じようなバックグラウンドを持つ ” まだ見えている世界が狭い地方のこども ” と接することができる環境に身を置くようになりました。」

ー 林さんも若者会議を入り口に、小布施にかかわることになっていったんですよね。


「そうですね。『徐々に小布施に巻き込まれていった』、というのが正しくて(笑)
まずひとつ目が若者会議ですね。その時のテーマが『環境』で、小布施の名産品である栗の皮を使ったバイオ燃料を作ることを提案しました。町長や町の銘菓さんも協力すると言ってくださって、『これはやらざるを得ないのかな』と感じて、1年間、月に1回くらいのペースで小布施に通うようになりました。」

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「その後2019年に、住民の方と行政の方とが一緒につくりたい町の姿を思い描いて、それを政策に落とし込む、というディスカッションのファシリテーターを務めました。2020年の1月に政策を発表したのですが、『誰が政策を実行するのか』という話になりました。

ちょうどそのタイミングで、コロナの影響によってすべての仕事がオンラインでできるようになり、東京にいる必要性が無くなりました。
だったらいっそのこと、いましかできないことをやろう、政策を実行するにあたって、移住しないと分からないこともたくさんあるだろう、と思い、小布施に移住するに至りました。」

ー 日髙さんは一番はじめに小布施にかかわることになったきっかけは何だったんですか?

日髙
「一番はじめは、遠山くんも話していたHLABがきっかけです。はじめて小布施に来て、会う人もあったかいし、おもしろい町だなと思いました。
その中で、小布施短編映画祭の実行委員に加わらないか、という声をかけてもらい、定期的に小布施に通うようになりました。より小布施を深く知っていって、ここに暮らしてみたいな、とか、ここに暮らす人たちと仕事がしてみたいと思うようになりました。

自分の中では、小布施に行こう、として意図していたというよりは、自然ななりゆきで気づいたら移住していた、という感覚があります。」


「まったく同じパターン(笑)」

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「今回のバーチャル町民会議では、関係人口というテーマを担当するんですけど、関係人口って観光客以上、移住者未満、みたいな感じで。
小布施町ってそういう人を生み出すのが上手なんだなあ、と感じます。自分もまんまと罠にはまった感じなんですけど(笑)

この小布施バーチャル町民会議も、そういう人を生み出す新しい場所になっていくといいな、と思っています。」

テーマオーナーって何やってるの?

ー 小布施バーチャル町民会議のテーマオーナーとしては、普段どういった活動をされているんですか?


「産業振興担当の地域おこし協力隊員として、小布施の企業支援や、新しい事業が生まれたり、いまある企業が活性化されたりしていくことを目指しています。
その取り組みを進める中で、小さな町で人口も限られていますし、小布施の外の人のネットワークや経験を活用することが大事だと思っています。小布施はそういった『外の人』を受け入れてくれる懐の深さがあるように、ぼく自身感じます。

実際に取り組んでいることとしては、地域おこし協力隊員として、小布施の企業に外の人がかかわって企業の課題に取り組むということを実験的に行っています。」

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ー 関係人口がまちづくりの中で「必要な要素のひとつ」と感じて、関係人口のテーマオーナーになったんですか?


「そうですね。あとは単純に、小布施はいろんな人がいて楽しいんだけど寂しくもなるから、外から人が来てくれるといいなって(笑)

例えば、東京に住んでいると、ふと『会いたい』と思った時にわりとすぐに会えるじゃないですか。
でも小布施にいると、『会おう』と思っても、いる人の数がまず限られている。外から来てくれないと会えない人もいるから、外から来てくれる人の数とかバリエーションが増えると、こっちも嬉しいなって。」

ー 自分も幸せになれるし、町も元気になって幸せになれるし、いいことだらけですね。
  林さんは「観光」がテーマですよね。


「はい、観光です。ただ、ぼくが観光のテーマオーナーをするのも皮肉なものだなと思っていて。というのも、ぼくは小布施若者会議でいきなり町に深く切り込む体験から入ったので、いわゆる『小布施での普通の観光』をしたことが無いんですよ。(笑)

最初から若者会議に参加して、町長とお話をしたり、町の人に会っていろんな話を聞いたりして。普通の観光では味わえない経験をしたからこそ小布施の魅力を感じて、ここなら楽しいことができるんじゃないかと思って移住をしました

今後、ただただ遊びに来たつもりの人が小布施のことを深く知れたりいろんな楽しい体験をしたりして、小布施町の大ファンになってまた帰ってきてもらうにはどうしたらいいのか、そんな観光の在り方をみなさんと一緒に考えたいと思っています。

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これまで小布施という町は、わかりやすい魅力のおかげで観光戦略が必要ありませんでした。今後は、コロナの影響によって、現状のままでは立ち行かなくなっていくと思います。
観光戦略を立てるには、「外から見た魅力」を伝える必要があるので、小布施の中の人、外の人が一緒に取り組むことが重要だと思っています。外の人が『自分がこう楽しみたい』ということを出し合って、未来の小布施の観光の在り方を描いていく、ということをしないと小布施の観光戦略は作れないと思うんですよね。

なので、今回のバーチャル町民会議のアウトプットは、私が全力で受けとめて実現に向けてその先も検討を進めていきたいと思っています。参加者の方としても、観光で訪れた町に対して観光客目線で直接アイディアを提案できるというのは、なかなかない体験だと思うので、積極的に色々なアイディアを出していただけると嬉しいなと思います!」

ー お話を聞いていると、「関係人口」と「観光」ってリンクする部分があると感じました。一方で、遠山さんがオーナーを務める「教育」はイメージがあまりわかないんですけど、どんなことをしているんですか?

遠山
「いまは、小学校に週3日行っています。子どもの支援を行ったり、休み時間に全力で遊んだり、また、GIGAスクール構想の実現に向けて校長先生をはじめ現場の先生や教育委員会の方々と日々話し合っています。
先生方も自分ごととして課題感はあるんだけれど、実際に教育現場ではどんなことがどんな風に動いてるのか分からないので、かかわれるところは是非かかわってほしい、と声をかけていただいて。」

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「さっきの二人の話と通じるなと感じたところは、やはり教育現場も学校だけだと無理があって、外の人の力が必要だというところです。
やるべきことが増えていく一方で、先生の負担ばかりが大きくなっているんですね。教育内容だったり、保護者の対応だったり。これはもう学校だけで解決できる問題じゃなくなってきていると思います。

あとは、自分自身が小布施にかかわりたいと感じた背景にも通ずるところがある点で、地方だからこそ出会う大人が先生か親くらいに限られるという問題があります。また、小布施は、小学校、中学校が1校ずつなので、幼稚園や保育園も含めると、最長12年間同じ顔ぶれのなかで過ごすことになります。
それもいいんですけど、外の人の力を借りて学校教育にかかわることによって、小学生の段階から見える世界も広がるでしょうし、もっとタッチポイントを増やせたらなと思いますね。

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バーチャル町民会議では、『こんなことを学校でできるんじゃないか』、というようなアイディアをたくさんもらって、それを実践していきたいです。
ぼくが現場で実践するのはもちろん、小布施バーチャル町民会議に参加してくださる方が実際にかかわってくれたら嬉しいですね。」

小布施バーチャル町民会議への期待は?

ー 最後に、小布施バーチャル町民会議に込める期待や、どんなことを話していきたいかを教えてください。


「移住してからの一年間を振り返ってみて、コロナのせいで会えなかったり、『遊びに行きたいんだけどちょっと・・・』という人がいたりしたことを思い起こしました。小布施バーチャル町民会議では、そういう人ともつながれる機会になるといいと思っています。

関係人口について何を話し合うか、というのも大事ですが、そこでの出会いが生まれたら嬉しいなと思っています。」


「関係人口って、将来的に移住しなければいけないという固定観念がある気がしていて。それに対して、バーチャルで町民会議をすることで、堂々と『小布施町民です』、と名乗れる人がたくさんいる状態を作れることが面白いなと感じています。

日本の人口そのものは減少しているけど、ひとりの人が、2つとか3つの場所に所属・存在できるようになれば、日本の人口って仮想的に2倍、3倍になるじゃないですか。それが日本をおもしろくすると思っていて。

そういう切り口として、新しいまちづくりの在り方を一緒に試せる人が集まればと思っています。まちづくりを通して、小布施のためにということを考えすぎずに、自分がやりたいことをやれる場として使ってもらえるといいのかな、と思っています。」

遠山
「教育をテーマに難しいことを考えることもできるんですけど、逆に、『こんなことあったらおもしろいよね』、という話の中から『これならまず始められそうじゃない?』ということを一緒につくっていきたいなと思っています。

あとは、いろんな人にかかわってほしいなという思いもあります。これまでに小布施に来たことがあって、オンラインだからハードルが低いと感じて参加してくれる方や、ぼく自身はじめて小布施にかかわったのが学生時代だったので学生にもかかわってもらえたら、とも思っています。」

ー 「小布施バーチャル町民会議」に込める期待について、三者三様の想いがあって、聞いていてとても面白かったです。ありがとうございました。

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ゆったりとした雰囲気もありつつ、それぞれが見据える「小布施町のすがた」を語るときのみなさんからは、小布施町の課題を自分ごととしてとらえて、よい方向へ舵を切ろうとする強い意思を感じました。

インタビュアーを務めたわたし自身、小布施生まれ小布施育ちですが、何をもってして町民なのか、ということの定義づけが、この小布施バーチャル町民会議によって難しくなっていく気がして、それがまた良さでありおもしろさだと感じます。

バックグラウンドが異なる個性的な三者三様のテーマオーナーによって、小布施バーチャル町民会議ではどんな話し合いができるのか、期待が高まる時間となりました。

執筆:髙津ひかり
撮影:小島有



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