地方移住で感じる「幸せ」はおすそ分けできるのか。バーチャル町民への挑戦
小布施町では2月から3月にかけて「小布施バーチャル町民会議」というイベントを開催します。これを企画しているのは、今年から小布施に移住した20-30代の若手メンバー。それぞれ、アフリカ帰りだったり、外資系コンサル企業だったり、ベンチャー支援だったり、様々な経験を経て小布施に移住してきました。
バーチャル町民会議自体の企画趣旨については先日のnote(下記)に譲るとして、このnoteでは運営メンバーの一人である林志洋が、自分の体験を元に「地方移住のエッセンスって何だろう?」と振り返りつつ、「バーチャル町民」というコンセプトに掛ける思いを語ってみます。
わたしが小布施に移住するまで
これを書いている私が、最初に小布施に訪れたのは、友人の誘いで参加した2018年2月の小布施若者会議でした。この若者会議は、町の「外」に住んでいる若者が小布施に集い、町長をはじめとする町の方にアイディアを提案するというユニークなイベントです。
その時には、町の特産である「栗の皮を使ったバイオ燃料」を作れないか、という提案をさせていただいたのですが、その場で町長から「やりましょう!」というお言葉をいただき、地元の栗菓子屋さんの社長からも「じゃあうちからは栗を提供します!」という具合で、一気に物が動いていくエネルギーに圧倒されたのを覚えています。
そこから提案したアイディアを小布施町に訪れながら実際に検討しているうちに、毎月のように小布施町に通うようになりました。
2019年度の小布施町の総合計画を見直すタイミングには、「総合計画戦略コーディネーター」として政策作りのための対話のファシリテーションをする機会をいただき、住民、町役場の方なも参加する形で、3回のセッションでビジョンを政策に落とし込んでいきました。
こうなるとよく知らなかった小布施町が、気づけば私にとっても「自分ごと」になっていました。そして、コロナで全ての仕事がオンライン化する中で、ありがたいことに町の総合政策推進官という役割をいただき、小布施町に移住することが実現しました。これまでの仕事も続けながらの兼務なので、自分としては移住しない理由がありませんでした。
「幸せ」はどこから来るのか
そんな私が、小布施町に移住してはや半年が経ちました。振り返ってみると、日々のふとした瞬間に「幸せだな」と感じることが増えたなと感じます。
・近所のご飯屋さんで友人に鉢合わせしたとき(しょっちゅう起きる)
・おすそ分けで沢山のリンゴとブドウをもらったとき
・買い物に行く途中に綺麗に色付いた山が目の前に広がっていたとき
・特段普通の日だけど、車で5分の温泉に入りにいったとき
・考えて出した提案を町の方々に受け入れてもらえたとき
・「林くんお願いできるかな」と頼ってもらえるようになったとき
などなど。仕事でもプライベートでも、ちょっとしたことなんだけれども、「ああ、この町に来てよかった」と思える瞬間がそこかしこにあるのです。
一体、この「幸せ」はどこから来ているのだろうか。この記事を書くのを良い機会に、少し考えてみることにしました。
真っ先に思い浮かぶのは 、食べ物・自然・文化の豊かさなど「小布施のコンテンツ力」です。「栗と北斎と花のまち小布施」の魅力として多くの人が思い浮かべる要素であり、観光客の方が楽しみにくる要素です。特に食事処のレベルは個人的には東京よりも圧倒的に高いと思っています。でも、これだけでは、今私が感じている「幸せ」は説明できないように思うのです。
もう少し深掘ってみます。
次に思い浮かんだのは、ヨソモノを受け入れてくれる懐の広さであり、そこから生じる「社会」に関わることができるという実感です。
小布施という町は、私のような新しく来た者の意見にも耳を傾けてくれ、そして実験する場所を与えてくれます。東京にいた時の「町」はどこか他人事だったけれど、ここではまさに皆の手で「まち」というものを形作っていくんだと感じられる。一人ひとりの役割があって、自分も何かできるかもしれない、と思える。このやりがいは、(私が東京で多く関わってきた)スタートアップ企業で働く魅力に通ずるものがあります。
それでも、と私は思います。「強い消費できるコンテンツ」があり、「まちづくりに関われる余白がある」ことこそが小布施の魅力だと言い切るには、何かを単純化しすぎているような気がするのです。
「近くのコンビニに行く感覚」で役場に行く
東京にいる時を思い返すと、私の生活はプライベートと仕事、家とオフィス、など常に白黒がはっきりしていました。美味しいレストランに食べに行く時も、友達と遊びに行く時も、常に「ヨソイキ」の帽子をかぶってから出かけていました。
家から一歩外に出ると、半径数キロ以内には何百万人もの人がいて、自分は常にその中の一人になる。その中で、自分の存在意義を確認するためにも、「今は仕事をしている」「今は友達と遊ぶ」などと、分かりやすいラベルを自分に貼り付けて、一生懸命その自分を演じていました。
その点、小布施町は半径2km圏内で町のほぼ全域がカバーできてしまう規模感なこともあり、仕事もプライベートも、日常も非日常も、すべての境界があいまいで、互いに溶けあっています。
何かに白黒はっきりさせることを強要されない。疲れたら緩めて、回復したら締めて。そんな揺らぎの中で、常に自分にとって自然体でいられる居心地の良さを、私はこの町に感じているのだと思います。
買い物しにいく途中で、秋の紅葉の美しさに目を奪われる。
ミーティングの合間に、歩いて数分の名店のモンブランで糖分補給する。
友人とご飯していたら、仕事仲間にバッタリ会って議論が始まる。
そのまま、友人も巻き込んで構想が膨らんで、友人と一緒にお祭りをする感覚でプロジェクトが立ち上がる(バーチャル町民会議がまさにこれです)
ウチでもないけど、ソトでもない、素の自分でいられてしまう。東京での生活の中で唯一そんな感覚を味わえるとしたら、それは「近くのコンビニ」に行く感覚かもしれません。小布施町では全てが徒歩圏内にあるので、ふと思い立ったら、美味しいレストランも、今の職場である町役場も、お気に入りの牧場にも歩いて行けてしまう、「いい感じの緩さ」があるのです。
ということで、「幸せ」の要素について考えていたら、何故か「近くのコンビニ」に行きつきました。さすがにコンビニのようにジャージ姿で役場には行きませんが(笑)、自分でもこの例えは意外としっくり来ています。
別に移住しなくてもいいんじゃないか?という仮説
話は変わりますが、私が今回のコロナ禍で感じたことは「オフラインでできることの多くは、工夫をすればオンラインでも経験できる」ということです。もちろんオフラインと「全く同じ体験」を追求すると、実体験の劣化版にしかならないのですが、オンラインの良さも活用するなど工夫を重ねることで、やり方は違えど本質的には同じ結果を得ることができるのではないか、と思うことも多いです。
実際、私自身、これまでの仕事も続けながら小布施に移住しましたが、幸いなことに全てオンラインでも大きな支障なく仕事を続けられています。
では、今自分が小布施町に移住して感じる魅力も、リアルで移住しなくても感じてもらえるのではないか。そんな仮説の元に、私たちが作ろうとしているのが「バーチャル町民」制度です。
遠くにいても小布施の味覚や芸術を楽しめる。
移住していなくても、まちづくりに関われる。関わらなくてもOK。
何となく他の町民(リアル・バーチャル問わず)の顔が見える。
それぞれの人が自分なりの「バーチャル町民LIFE」を送れる。
そんな小布施らしい、緩い仕組みを作っていきたいと思っています。
ちなみにどのくらい緩いかというと、「バーチャル町民会議」というイベントをやることは決まっているものの、「バーチャル町民」が何をするのかは参加者の人に考えてもらおう!と丸投げしようとしているほどです(笑)ちなみに、
・バーチャル町民を共に設計し創っていく「関係人口分科会」
の他にも、
・学校現場とも協力して未来の教育をプロトタイプする「教育分科会」
・ヨソモノだからこその視点で町の魅力を考える「観光分科会」
と三つの分科会に分かれて町づくりに携わる場を用意していますので、もしこの記事を読んで「小布施って面白そう」「関わってみたいな」「もっと知りたいな」と思ってくださった方がいらっしゃれば、以下のリンクから参加申し込みをお願いします。
参加者にはもれなく、小布施の魅力を感じていただけるその名も「オブセット」をお送りします!申し込み締切は1月11日です。
それでは、皆さま小布施でお会いしましょう!