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【あいうえおぶせ】 し号 ジャージー牛×ジェラート

ジャージー牛ってご存知ですか?

一般的な乳牛として知られる白黒模様のホルスタイン種と比べ、小柄な体格ですが、乳牛のなかではもっとも濃厚で味わい深い牛乳を生み出す品種といわれています。

一方で、搾乳量はホルスタイン種の半分ほどであるため、国内での飼養頭数は全乳牛のわずか1%
その分、希少価値の高さから、近年注目を集めています。

そんなジャージー牛を飼育し、牛乳をジェラートやフレッシュチーズに加工して販売する6次産業を立ち上げた、「小布施牧場」
経営する木下兄弟は小布施で生まれ育ち、自分たちの夢に向かって歩み始めています。

兄弟それぞれの経験を生かし「小布施牧場」を開業

広大な森のなかで、子牛を眺めながらミルク感たっぷりのジェラートを味わう。そんな体験が楽しめるジェラート工房&カフェ「milgreen(ミルグリーン)」
観光客が行き交う小布施中心部とは異なる穏やかな風情の「小布施千年の森」に、2018年に誕生しました。

こだわりは、長年英国王室御用達とされてきた濃厚なジャージー牛を使っていること。クリーミーながらさわやかな味わいで、三世代、四世代にわたる家族連れも訪れるなど、老若男女に親しまれています。

営むのは、酪農家の木下荒野(こうや)さんと、加工・販売をする兄の真風(まかぜ)さん

荒野さんは幼少期から動物が好きで、高校時代の酪農体験を機に北海道の酪農学園大学に進学しました。

卒業後は酪農と稲作の複合経営に加え、ジェラートやチーズ、米を使ったおかきや餅などの6次産業にも取り組む東御市の永井農場に就職。
そして、3年間の勤務を通じて農業における6次産業の力強さを実感するとともに、「酪農は天職だ」と感じたといいます。

荒野さん「ずっと動物をパートナーに仕事がしたいと感じていたなかで、酪農は牛を家族同然の存在に感じられるやりがいがありました」

そこで、海外の酪農も経験したいと永井農場を退職し、ニュージーランドへ。牛舎もない放牧酪農で、飼料のトウモロコシも自社でまかなう自給率ほぼ100%のシステムを経験。

それと同時に海外暮らしで自分と向き合う時間が増え、次第に地元の小布施町に帰って恩返しがしたいと思うようになりました。そして「小布施牧場」の設立を構想するようになったのです。

荒野さん 「小布施での酪農は10頭程度の小規模が現実的です。ただし、小布施栗のブランド力を生かした付加価値づけで成功した町内の栗菓子産業にならい、希少なジャージー牛乳を使った6次産業なら差別化が図れ、事業にできると思いました。
また、りんごやぶどう、モモなどを栽培する地元の果樹農家とのコラボもできると考えたのです」

一方、真風さんは当時、都内のホテルで働いていましたが、荒野さんのビジョンを聞いて兄弟経営を決断したと言います。

真風さん 「もともと30歳を機に小布施に戻ろうと思っていましたし、将来的に店をもちたいという思いもありました。
それに、家族仲よく暮らしていけたらと思っていたので、ジェラート屋で働いていた弟の妻と私のサービス業の経験を生かせると思ったんです」

写真左:加工・販売している木下真風(兄)さん、同右:酪農家の荒野(弟)さん

健康に配慮した飼育が基本 牛と人をもっと身近に

こうしてスタートを切った「小布施牧場」。

荒野さんは牛を健康的に飼うことにこだわり、ニュージーランドの放牧酪農に近づけつつ、夏は暑さに弱い牛のストレスを考え、ファンの効いた牛舎で自由に動き回れるようにし、朝夕の涼しい時間帯に遊休農地に放牧しています。 

また、牛舎の臭気対策として、地元農家が培養する善玉菌(乳酸菌・酵母菌・納豆菌など)で発酵させた米ぬかボカシを牛に与え、腸内環境を整えることで牛の排泄物の臭いを軽減。
さらに堆肥にもそのボカシを混ぜることで、臭わない牛舎をめざしています。

そして、その堆肥は遊休農地を耕した田畑に使い、飼料のトウモロコシを栽培。エサとしてはさらに延徳田んぼの天日干しした稲わらなども与え、可能な限り自給率を高めています。

そのうえで、搾りたてのジャージー牛乳は、真風さんがすぐにジェラートに加工。イタリアのカルピジャーニ社製の製造機を使い、空気の含有量が高くなめらかな舌触りのジェラートを作っています。

また「milgreen」を5haもの広さの森に建てたのは、「牛を身近に感じてもらいながらジェラートを食べてほしい」という思いから。

真風さん「子牛を見ながらジェラートを味わうなかで、地域の方々に食育の面や憩いを感じていただきたいです」

さらに「milgreen」では週1回、荒野さんが作るフレッシュなモッツアレラチーズも販売。保存料が入っている一般的なモッツアレラチーズと異なり、牛乳本来の新鮮な味わいを楽しめます。

このチーズが好評を博し、なんと今年(当時2020年)1月12日に「milgreen」に増築する形でチーズ工房が新設されました。

美しい里山づくりと“楽農”経営で幸せを

そんな「小布施牧場」のビジョンは、遊休農地や荒れた里山を再生させ、小布施牧場の小規模な酪農モデルを日本全国に広げていくこと

また「酪農は大変」という風潮を払拭すべく、今後は新規雇用を図って休みを取りやすい体制をつくり、若手就農者を増やす礎となることで、日本の農業のさらなる活性化もふたりの目標です。

荒野さん「こうして小布施牧場が頑張ることで町にもっと活気が生まれ、ジェラートを通じて、小布施町に幸福感をもって暮らす人がさらに増えたらうれしいですね。
こうした幸福感が日本中に広がっていくのも面白いなと思っています。そのためには、まだまだこれから。遊休農地ももっと活用し、より高いところをめざしていきたいです」

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※掲載内容は刊行当時のものです。情報が最新ではない場合がありますのでご了承ください。
※noteでの掲載のため、一部内容を編集しています。

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