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おぶせ環境人インタビューvol.4 ラブ・フォレスト株式会社 代表取締役 小島健一郎さん

小布施町には「日本の木質バイオマス業界の第一人者のひとり」と呼ばれる専門家が住んでいます。新しい技術や製品を開発する卓越した技術者であり、革新的なビジネスモデルを世に問う企業家でもある小島健一郎さんです。欧州のエネルギー業界でも一目置かれ、国際会議にアジア人として唯一登壇し講演するなど活躍する小島さんに、これからのバイオマスと僕たちの生活のあり方について話を聞きました。

バイオマス事業とは、どういうものなんでしょうか。

 私の会社は、「木質バイオマスのエネルギー利用」に特化する形で、関連するソフトとハードの開発と販売をしています。バイオマスとは何か?一言でいえば、「人類の起源」と言えるかもしれません。私たち人間は火を利用することで、暖をとり、調理ができるようになりました。その後の技術革新で、燃料は石炭、石油、天然ガスと変化していきましたが、その過剰な利用による二酸化炭素排出は、いま気候危機として人類全体が向き合わなければいけない課題になっています。この危機を乗り越えるために、現代の技術を活用した形で木質バイオマスを有効利用する時です。

 ただ、使うエネルギーを化石燃料から木質バイオマスなどの再生可能エネルギーに変えていくだけでは十分ではありません。いま日本人一人当たりの排出する二酸化炭素量は世界でもトップクラスです。まずは使うエネルギーを省エネすることが大事です。基本的なことでは、窓ガラスを二重にするなど家の断熱性を高めることで、エネルギーの利用量を「ダイエットする」。ここからはじめましょう。

 日本は世界有数の森林国です。先進国で、私達の国ほど森林率が高い国はそれほどありません。私の海外の友人からは「日本はてっきりコンクリートと鉄筋でできていると思っていたら意外と森林が沢山あって素敵ですね」と言われたこともあります。また「世界中から木材を買っているのは自国の森林を保護するためなのか」 と真剣に聞かれたこともあります。私たちはこのポテンシャルを最大限生かしているとはまだまだ言えない状況です。日本の多様な森林を上手に活用して、本当の意味で豊かな森林を育み利用していかなければいけません。

小島さん自身がバイオマスをやろうと思ったきっかけはなんですか。

 1995年、私が大学四回生だったころは、農学や林業を勉強していました。そのころに赴任したばかりの小池先生という方に出会ったのです。不勉強だった私は、木材は材料利用だけだと思い込んでいたのですが、小池先生から「木でもエンジンは動きます」と木質エネルギーの存在を教わりました。「木材はエネルギー利用もできるんだ!」と大変に感動したのを今でも覚えています。 それ以来、バイオマス一筋でやってきました。


長野県で取り組んでいる事業について教えてください。

 長野では「松本平森林エネルギー」という会社を設立し、松枯れなどで山でゴミになっている木々を回収し、チッパーにかけ木質チップにして、松本市の竜島温泉など温浴施設で利用してもらっています。これはいわば、森に捨てられている「ゴミ」を「資源」に変身させる事業です。佐久でも「佐久森林エネルギー」という会社の経営に携わり、同じように打ち捨てられた木々を木質チップに生まれ変わらせ、佐久総合病院などの熱エネルギー利用に使ってもらっています。このように、地域の資源を、地域で利用し、お金を外に出さず地域内でまわす循環をつくることはとても大切だと感じています。

小布施町でのバイオマス事業の未来についてはどうお考えですか。

 小布施でも、町が中心となって町内でのバイオマスボイラー導入可能性について調査していると聞いています。農業が盛んな地域なので毎年大量に出る剪定枝などは、ゆくゆく木質チップなどにして資源化ができます。この木質バイオマスの熱利用のネットワークを小布施だけに留めるのではなく、北信地域で連携して需要を生み出していくとより持続的になります。さらに、地球温暖化が進行するに連れて、これから松枯れの問題が徐々に小布施を含む北信地域へ北上することが予想されます。そうした近い将来の課題へ予防的に取り組む意味でも、バイオマス利用の実現へ向けて今から動いていくことが大事だと思っています。

 そして、最も力を入れるべきは学校現場での環境教育です。これから2050年にゼロ・カーボンを実現するための重要な担い手は、若者、子どもたちです。彼らに最新の環境分野の知見に触れてもらい、実際に体験してもらうことが大切です。たとえば従来の教室では灯油ストーブの使用が主流ですが、実験的に薪ストーブやペレットストーブを活用し、その使用感を子どもたちに親しんでもらうことはとても有益ではないでしょうか。

編集後記

小島さんのオフィスを訪ねると、そこにはオーストリア製のモダンなペレットストーブが焚かれていた。ペレットに加えて薪も利用可能で、自動で燃焼の具合を調整する最新モデルとのこと。こんな素敵なペレットストーブ、我が家にも欲しいです。


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